2023年12月10日Psilocybin 体験記
by Akiko Tamura 田村晶子
(Photo provided by 田村晶子)
私は今まで覚醒剤を使った事はないし、興味も全くなかった。
名前さえもほとんど知らなかった。
2023年夏前からアルコールの摂取量が極度に増え日常生活にも良くない結果をもたらしていた。
アルコール専門の病院にも行って見たが3ヶ月の入院は長すぎ、2種類の薬の一つは以前摂取後に亡くなった人もいたとの情報があり飲みたくなかった。どうする術もなかったときに息子が米国オレゴン州で認可された一つの新しい方法を教えてくれ、私は例え私に効かなかったとしても興味がありセラピーを受ける事にした。下記は2023年12月10日受けたセラピーのレポートで参考文献、サイトなど文末に付記した。またニューヨーク タイムズに掲載されたPsilocybinについての最新の記事の翻訳を参考資料として同封した。
2023年12月11日
2023年12月10日Psilocybin 体験記
Psylocibin による治療と脳の働きの話はオレゴン州ポートランドに住む息子からきいた。この最新の治療、2023年時点で米国のオレゴン州のみで認められている治療を勧められ少しの躊躇もなく受ける事にした。
ポートランドから約1時間の Food River にあるVital Reset に10時前に到着。10時からセッションを始めるとのこと。
今日使うマッシュルームのSilocybinは私の体重から計算し20 ミリグラムと言うことだが1時間半経過しても効かない場合は量を少し増やすという事だった。
ベッドのある部屋での開始前の説明の前に2本の乾燥させたマッシュルームを見せられ簡易キッチンのようなところでミキサーで砕き私の選んだお茶に混ぜてくれた。マッシュルームの灰色の部分の成分がこれからのサイケデリックな経験を引き起こすという。
カップを持ち部屋に入り私はベッドの上に座り、ファシリテイター(適当な和訳は見つからないがこれからのセッションが安全に進められるよう世話をする人)のJay, 研修中のなお子さん、もう一人のお茶を作った男性の3名が椅子に座っていた。Jay が飲んだ後の経過やするであろう体験につき説明をしたが今はあまり覚えていない。ただサイケデリックなものが出てきたり暗いところを前にして後退しないで前に進むようにと言われたと思う。また寒さを感じたら毛布を用意してあるとの事。
お茶を飲んだ後ベッドに横たわりアイマスクをした。20mgというのは少ないから多分1時間半何も起こらないかもと思っていた。しばらくは普通の状態だった。
しばらくして何か目隠しの後で動いてきて寒さを感じたので毛布を頼んだ。それからスピードが増し、サイケデリックな色の渦が回りだしそのうち両肩、腰、足などが痙攣のように上に跳ね上がってきた。その時は頭も朦朧とし、なんのために誰がやっているのかも思い出せずにいた。胸も少し苦しくなり心配になり手を握ってくれたなお子さんにもう続けたくないと訴えたと思う。彼女はもう少し我慢するようにと答えたと思う。その頃にはこの場所にいてマッシュルームを飲んでいるのはアルコール依存症の治療のためということを思い出しそこにJay がいるのだということも思い出した。サイケデリックな色の渦の動きは激しくそれに伴い私の身体も激しく振り回されてこの歳でこんな激しいことはできないと訴えたと思う。その間なお子さんはトイレに行ったように思うがその時他の人が手を握ってくれた。また右肩に誰かが手のひらを置いてくれたと思う。そんな激しく苦しい時も少し収まった。その後何があったか、どうやって覚めたのかもわからない。私がベッドの上に座ったのは4時少し前だったと思う。午前中10時過ぎから午後4時ごろまで意識がほとんどなく5時間以上横になっていたらしいがそんなに長時間だったとは思えなかった。トイレに行こうとしたが一人では歩けなかった。2人に両腕を支えられつつトイレに行った。
スナックが出されJay となお子さんと私の治療中の様子や体験を話した際私が盛んに足で何かを蹴っていたと彼らが様子を語ってくれた。息子が戻ってきたのでまた4人で話し支払いをしてJay となお子さんに見送られ夕暮れの美しい景色の中車で帰途についた。車までの距離を歩くにも身体はまだ少しふらつきがあり息子の腕にもたれて歩いた。途中トイレ休憩した時も一人で行くのは少し不安で息子に入り口までついてきてもらった。
昨晩外食の後帰宅したのは8時少し前。身体はまだ完全に普通の感覚ではなかったが一日中何の運動もしなかったのでストレッチなどして9時過ぎには息子の妻と子供たちが食べた食器の片付けを彼女が子供達を寝かせている間に彼とするくらいしっかりしてきた。
昨夜は11時前ぐらいに寝ていつものように何回かトイレに起きたが朝まで眠れた。
(Photo provided by 田村晶子)
12月11日
7時半ごろ目覚め疲れも感じるので8時ごろまで寝ていようと思った。横になっていると昨日のように寒さがジーンと身体に感じ肩、腰、足が上にピクリと痙攣のように動き始めマッシュルームの体験中よりひどくなかったが収まった後も2回同様な事が起こった。8時には収まったようなので床から出た。
息子が見せてくれたMachael Pollan の作成したビデオでは末期の癌患者の70代ぐらいの女性がマッシュルームを飲んだ後の変化について話していた。死への対処や感じ方、考え方が全くポジティブに変わり宇宙の大きなものに自分が入って死に対する恐怖などなくなり生きているいち日、1日を過ごして行こうというようなマッシュルームの素晴らしい影響を話していた。
今朝になり私の感じ方は上記の女性とは異なり、サイケデリックな渦に身体も心も激しく振り回されたことが消えずもしもう一度体験するかと言われたらこの歳ではきついと答えると思う。
ポジティブなことは一昨日までのように目覚めてすぐにアルコールへの欲求は感じない。ただ昨日と違い心配という雲が出てきている。またひどいアルコール依存に戻るのではないかという不安。大きくはないがぽつっと出た一つの雲のように心に影を落としている。
昨日息子と話したが日本では私は一日中自分の時間でやはり何かエネルギーと心を注ぎこめるものを見つけなくてはと思う。何ができるかそれを課題としたい。私は意志が弱いと思うので自分で過度なアルコールの摂取を制限したりやめるのは非常に困難だ。最近のひどい依存の癖を今回のマッシュルームで変えられるように切に願っている。
昨日は今まで体験したことのない経験、非現実的な世界を見て感じ、往復の美しい景色などで心が非日常的に余分な思いは消され透き通ってきたような感じがした。アルコールはいつものようにめちゃくちゃに飲みたい気分はなくただレストランで体をほぐすためビールをグラス一杯飲んだ。
今日は12月27日。これまでに12月13日と20日にIntegration(まとめ)として2回Google Meet でJay と話した。彼はカンセラーの資格も持つので日本に帰国してもしばらくカンセリングとして定期的にGoogle Meet で話す予定にした。ここポートランドでは息子夫婦は私の問題を良く理解し非常に協力的なので私が治療後の状態を保つのに役立つ。日本に帰れば違う環境になるのでまた戻ってしまうのではないかとの不安が少しあるので引き続きJay と話せるのは助かる。
今日まで10日以上私が依存していた白ワインを飲みたいとの気持ちが湧いてきていない。これはまさに私にとっては奇跡である。スーパーに行きワインボトルのたくさんの陳列を見ても興味が湧かない。
一昨日料理にワインがいるので冷蔵庫の開けていない白ワインをあけ100 cc 使った時以前ならすぐに残りを飲んでしまったろうと思うが全く飲みたいという欲求が湧かない。ただしビールは小瓶で夕食と共に飲んでいる。これもI日おきにいずれはしたいと思っているがこの程度のことなら意思の弱い私でも出来そうだ。
もう一つの私に起こった素晴らしいことはセラピー前には脳がアルコールというところに張り付いてしまったようでその他の事項にはほとんど届いていなかったようだが、セラピー後新年にやろうと思うこと、興味が出たことを書き出してみたら10以上出てきた。ということは私の脳が活性化したということだろうか。以前は興味が色々あったがまた元に戻ってきているということだろうか。
追記
現在では治療としてPsilocybin の他に120種ぐらいのキノコがこの治療に使われているそうだ。治療の効果は高いことが ジョンズ ホプキンス, バークレーなどの有名大学で行われているリサーチで証明されている。ハーバード大学はリサーチに積極的に参加していないそうだが理由がある。この治療は現在オレゴン州のみで認められているが来年にはFDA (Federal Department of Agriculture)が認め全米でとり入られるのではないかとの話もきいた。アルコール、薬物依存の他に末期癌患者などの死への恐怖感とそれに伴う鬱、うつ病、 PTSD, それとニューヨーク タイムズの記事ではさらに広範囲の効果のリサーチも行われ始めているらしい。
マッシュルームの使用は3,000年前からのメキシコでの歴史もあるそうでここまで至った経過についてはもっと学んでみようと思うのと脳との関連などこれから調べたいことがたくさんある。
参考書籍
“ How to change your mind” Michael Pollan 著
和訳 “ 覚醒剤は役に立つか” (この和訳に関しては私個人はあまり適切と思わない)
ニューヨーク タイムズ記事(日本語訳同封)
Psilocybin research
https://healingadovocacyfund.org/research
https://vitalreset.com/psilocybin-and-science
The Next Big Addiction Treatment https://www.nytimes.com/2022/03/31/well/mind/psilocybin-mushrooms-addiction-therapy.html Melissa Schriek for The New York Times By Brendan Borrell 公開日:2022年3月31日 更新日:2023年6月22日
ここ数年、サイケデリック・ドラッグがうつ病や不安神経症、慢性疼痛、摂食障害といった精神疾患の治療に役立つことを示唆する研究が相次いでいる。しかし、薬物乱用という難病を治療する最有力候補を示すデータも増えている。サイケデリック・マッシュルームの有効成分であるシロシビンは、初期の限られた研究において、アルコールやよりハードな薬物だけでなく、ニコチンにも有望であることを示している。「ニューヨーク大学グロスマン医学部の精神科医マイケル・ボーゲンシュッツ博士は、アルコール依存症の治療法としてシロシビン補助療法を研究している。"このプロセス全体について私にとって魅力的なのは、人々がどれだけ多くの異なる種類の経験をすることができるかということです。数年前、50歳の誕生日を迎える前にタバコの習慣をやめたいと思ったアイミー・ジャミソンを例にとろう。統計的に言って、ジャミソンさんが成功する可能性は高くなかった。米国疾病予防管理センターによると、2018年には成人喫煙者の55%が禁煙を試みたが、成功したのはわずか8%だった。ボストンにパートタイムで住む投資家のジャミソンさんは、サイケデリック療法について聞いたことがあったが、薬物は個人使用はほとんど違法である。そこで2018年の秋、彼女はジョンズ・ホプキンス・センター・フォー・サイケデリック&コンシャスネス・リサーチの臨床試験に参加するため、ボルチモアに飛んだ。脳スキャンの前に1日ニコチンを断たなければならなかったとき、彼女はほとんど眠ることができず、"私が経験した中で最も地獄のような24時間 “と呼んだ。ホプキンス・クリニックで3回のトーク・セラピーを受けた後、彼女は比較的高用量である30ミリグラムのシロシビンを含む錠剤を1錠処方された。錠剤を飲み込んだ後、彼女はアイマスクをしてソファに横たわり、それから5時間、近くにいた2人のセラピストとともにサイケデリックな旅に出た。トリップが終わると、彼女は立ち上がってセラピストたちを見た。「なぜタバコを吸っていたのかがわかりました。その後数ヶ月間、ジャミソンさんはさらに数回のセラピーを受けたが、シロシビンを追加摂取することはなかった。それ以来、彼女はタバコに手をつけていない。2014年に発表されたその研究の初期バージョン(参加者は2、3回のシロシビンセッションを受けた)では、15人の喫煙者で80%の成功率が報告された。このような好結果に後押しされ、ホプキンズの研究は参加者を増やし、昨年、研究チームは国立衛生研究所から400万ドルの助成金を受けた。依存症の治療にシロシビンを使用することが長期的にどの程度効果的なのか、また、恩恵を受けやすい人とそうでない人がいるのかどうかはまだ不明である。研究参加者の中には、旅行中に困った経験をした人もおり、専門家は、正当な研究以外や医師の監督なしに薬を服用すべきではないとしている。
シロシビンの体験時間は5時間であるため、医療費も高額になり、薬物やアルコール乱用の影響を多く受けている低所得者層での使用が制限される可能性がある。それでも、新しい依存症治療法に飢えている多くの専門家は、シロシビンは、対処が困難な病気に苦しむ人々にとって、新しくエキサイティングな治療法になる可能性があると述べている。化学的依存以上のものを治療する 中毒の治療が難しい理由の一つは、そのほとんどが化学的依存以上のものだからである。短期的な禁断症状が和らいだ後も、依存症に苦しむ人々はしばしば、その習慣が与えてくれたストレス発散の弁がない生活に直面する。禁煙を望む人は、数週間から数ヶ月は我慢するかもしれないが、ストレスを感じたり動揺したりすると、脳はしばしば依存症の慣れ親しんだ領域に戻ってしまう。専門家の中には、シロシビンはそのような心理的欲求に応えるものだと言う人もいる。LSDやメスカリンとともに「古典的なサイケデリック」として知られ、脳の視覚野にあるスイッチ、セロトニン5-HT2a受容体を活性化し、幻覚を引き起こす。1950年代と1960年代のサイケデリック全盛期には、このような薬物がうつ病や依存症の治療薬として評価され、さまざまな結果が出た。しかし、1970年代に規制薬物法が制定され、LSDとシロシビンはスケジュール1と呼ばれる最も規制の厳しい法的カテゴリーに入れられた。それから30年後の2000年、ジョンズ・ホプキンスの精神薬理学者ローランド・グリフィスは、食品医薬品局から許可を得て、30人のボランティアを対象にシロシビンの心理的影響を研究した。セッションの2ヵ月後に参加者に行ったアンケートでは、半数以上が人生で最も有意義な体験のひとつに挙げた。それ以来、サイケデリック研究は花開いた。今年初めに発表されたイギリスの研究によると、重度のアルコール依存症患者がケタミン補助療法を受けた場合、プラセボを投与されただけで、療法や教育を受けた場合よりも、6ヵ月間で10%多く飲酒を断念した。しかし、ケタミンと依存症に関するいくつかの研究では、ケタミンの抗うつ効果は時間の経過とともに薄れ、参加者は繰り返し注入を必要とする可能性があることが示唆されている。これは、ケタミン自体が乱用薬物になる可能性があり、まれに過剰摂取が命取りになることもあるため、潜在的な問題である。シロシビンに熱心な研究者によれば、より長く、より強烈なサイケデリック体験が得られるため、より長続きする治療法だという。シロシビンは、心理療法や他のカウンセリングと組み合わせることで、通常1回、時には数回のセッションで効果を発揮する。「シロシビンの服用後は、精神的な柔軟性が高まります」と、ジョンズ・ホプキンズの心理学者で喫煙試験を率いるマシュー・ジョンソンは言う。"この開放性の増大は、依存症の克服に役立つ永続的な変化かもしれません"。不確かな未来 シロシビンは連邦薬物法では依然として違法だが、デンバーやカリフォルニア州サンタクルーズなどいくつかの都市では非犯罪化されている。オレゴン州は2020年11月、医療用として初めて合法化することを決定した。